■家政学図書目録刊行会「今、オススメの1冊」


食行動の変容を促すために
―健康行動理論とマーケティングの活用―

北海道立旭川高等看護学院 非常勤講師 松本千明

はじめに

 生活習慣病の予防や治療のためには、食習慣をはじめとする生活習慣を健康的なものに変えてもらう(「行動変容」してもらう)必要があり、人に行動変容を促す場合に役立つものとして、健康行動理論とマーケティングがある。

健康行動理論

 健康行動理論とは、「健康によい行動へのやる気になるための条件」を示すものである。例えば、代表的な健康行動理論の一つである「健康信念モデル」では、図のように、やる気の条件として「危機感」と「メリッ卜とデメリッ卜のバランス」を挙げている。
 健康信念モデルに基づいて、栄養指導や栄養教育で対象者に健康によい食行動を勧める場合は、このままではまずいという「危機感」と、健康的な食行動のメリッ卜の方がデメリッ卜(妨げ)よりも大きいと感じてもらう必要がある。(なお、「危機感」は、病気になる「可能性」と、病気になった場合の「重大性」の2つを感じることで生まれる。)

マーケティング

「消費者を買う気にさせる考えや工夫」であるマーケティングも、対象者に健康によい食行動を勧める栄養教育に応用することができる。なぜなら、マーケティングも栄養教育も、「不特定多数の人に何かを勧めて、それを受け入れてもらう」という点では同じだからである。
 マーケティングの代表的な考え方として、「行動の重要性」、「顧客志向」、「市場の細分化」、「調査の重要性」、「マーケティング・ミックス」、「交換」、「競争」などが挙げられる。
 例えば、健康的な食行動を勧める栄養教育にマーケティングの考えを応用する場合は、対象者がその食行動を採用するかどうかが重要であり(「行動の重要性」)、そのためには、対象者のニーズを満たすように彼らの視点に立って働きかける必要がある(「顧客志向」)。
 具体的には、対象者全体(「市場」)を似た者グループに分けてターゲッ卜を絞り(「市場の細分化」)、対象者への調査結果に基づいて(「調査の重要性」)、ターゲッ卜に合わせて「マーケティング・ミックス」と呼ばれるツールを用いて働きかける。またその場合、健康的な食行動を採用する上で払うコストと「交換」に得られるメリッ卜の方を大きいと感じてもらい、健康的な食行動の「競争」相手の行動にも勝たなくてはいけない。

図 健康信念モデルを理解するための概略図

「医療・保健スタッフのための健健康行動理論の基礎」
松本千明、医歯薬出版、2002、p5の図を一部改変。

表1 栄養CSの事業内容
出版社名 書名
(シリーズ名)
ISBN 編著者名 本体価格
南江堂 行動科学 ―健康づくりのための理論と応用― 978-4-524-25311-1 畑栄一・土井由利子 2000円
化学同人 行動変容を成功させるプ口になる栄養教育スキルアップブック 978-4-7598-1160-5 赤松利恵 2400円
医歯薬出版 医療・保健スタッフのための 健康行動理論の基礎 978-4-263-23337-5 松本千明 1800円
医歯薬出版 医療・保健スタッフのための健康行動理論 実践編 978-4-263-23393-1 松本千明 1800円
同文書院 わかりやすいEBNと栄養疫学 978-4-8103-1316-1 佐々木敏 2500円
(今後、改訂が予定されている書目を含みます)