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学生に伝えたい国際栄養事情
―第15回国際栄養士会議見聞録―

藤女子大学 人間生活学部食物栄養学科 藤井義博 

 世界の栄養士職が一堂に集う国際栄養士会議(ICD)は、オリンピックのように4年ごとに開催されているが、今回、中村丁次ICD2008組織委員会委員長の20年間の努力が実を結んで、初めて日本で開かれた。すなわち第15 回国際栄養士会議(ICD2008)は、9月8日から11日まで、パシフィコ横浜において、57カ国4,621名の参加を得て、盛会裡に開催された。筆者は、前夜祭から、バンケット、イブニング・コンサートを含め、閉会セレモニーまで多くのプログラム(教育講演、シンポジウム、ポスター発表など)に参加し、世界中の栄養士職の活躍に目を見張った。その中で著者の注目したことを挙げてみたい。

 力強い言葉が聞かれた:「栄養士はもっと見えるようになる必要がある。」「栄養士は食卓だけでなく全てのテーブル(あらゆる委員会、会議における)での主役である。」

 タイはこの20年で伝統的な農村社会から工業社会になった。その結果、多様性が失われて均一的になった。1989年には1軒しかなかったコンビニが2008年には3742軒もある。20年前には伝統的食材であふれていた市場で、その姿が減ってきた。朝食抜きが増え、座業の増加からメタボが急増している。世界に広まる母子手帳制度に始まり、最近ではメタボ対策、食育を積極的に進めている「日本はアジアの国々の良い例である。」

 「伝統食とは第二次世界大戦前の食事である。」食のグローバル化(globalization)は、世界のおいしいものが手に入るという意味ではよいが、食のバーガー化(burgalization)はいただけない。食の局地化 (localization)(ばあちゃんの食事、伝統食、よい食習慣)も大切。しかし、2000年近くヨーロッパを中心に世界各国へ散らばって居住していたユダヤ人が第二次世界大戦後に集まって建国した新しい国イスラエルには、以前に居住していた各地の伝統食はあるが、イスラエル自身の伝統食がない。カナダの広大なブリティシュコロンビア州では、電話やインターネットなどのテレコミュニケーションを利用した遠隔地栄養士(teledietitian)による、遠隔地医療(telehealth)の取り組みをしている。

 「栄養素ではなく、食事に焦点を当てる。」デンマークの病院給食においては、対象者の栄養評価に基づき栄養素を取り扱う臨床栄養士ではなく、対象者のQOLを重視して食事を取り扱う管理栄養士(administrative dietitian)の活躍がある。病気関連の栄養不良には、「よく食べて元気を回復する」ことがゴールであったが、肥満の増加によりプライマリーヘルスケアにおいては「よく食べてもっと元気になる」ことがゴールとなっている。健康長寿のゴールは、「できるだけ年を取って若く死ぬ(Die young as old as possible ! )」ことである。

 栄養士は文化を言葉と行動でも表現できないといけない。デンマーク栄養士会会長マリー・アン = ソーレンセンは、閉会式において、ICD2008の実現のために20年間の努力をしてきたICD2008組織委員会委員長の中村丁次氏を自国のアンデルセン童話の「みにくいアヒルの子」に喩え、今や白鳥になった彼に向かって、我が国の習慣に習い最敬礼をして讃えたことは、最も感動的な光景であった。