特集1 橋本玲子さんに聞くスポーツ栄養の現場
特集2 家政学図書目録刊行会 「今、オススメの1冊」


オリンピックイヤーに、スポーツ栄養を考える!

 北京オリンピック開催にあわせて今、さまざまな競技で予選大会が花盛りですが、スポーツには各々の特徴にあわせた食事、栄養が必要です。
 スポーツはまた、日常の健康維持・増進のためにも必要ですし、話題のメタボリック対策でも重要です。声高に必要性が叫ばれるスポーツですが、そのための適切な栄養の取り方を特集します。

Q. 初めに「日本スポーツ栄養研究会」について教えてください。

 スポーツ栄養は最近注目されている比較的新しい領域ですが、学問体系が確立されておらず、情報交換の機会はあまりありませんでした。そのため、関わる栄養スタッフの知識や技術のレベルに差があるという現実は否めませんでした。そこで、鈴木志保子さん(神奈川県立保健福祉大学)らと準備期間を経て平成15年に「日本スポーツ栄養研究会」を立ち上げました。本会は日本栄養士会の学術関連団体で、スポーツ栄養学研究の促進と情報交換を図り、スポーツ栄養学の進歩・普及とスポーツの発展に寄与することを目的とした研究会です。平成19年には特定非営利活動法人とし認証されました。現在会員数は約650名、賛助会員は15社です。学術集会をはじめ、スポーツ栄養ベーシックコース講習会や市民講座などを通じて、スポーツに栄養の普及と、高い専門性を有した“スポーツ栄養士”の育成にも力を注いでいます。

Q. スポーツ栄養のネットワークづくりを思い立ったきっかけとは、どのようなものだったのでしょうか?

 私は1992年のバルセロナ五輪に、日本陸上競技連盟の支援コーチ(専属管理栄養士)という立場で帯同しましたが、アメリカのオリンピックトレーニングセンターを訪れたり、スポーツ栄養の国際会議で大きな刺激を受けてきました。アメリカやオーストラリアなどの諸外国では、スポーツ医・科学を活用した選手強化が行われており、その中にきちんとスポーツ栄養も位置づけられていたのです。一方日本では、各自の経験則でサポートが展開されていました。スポーツ現場で関わる栄養スタッフのスキルアップのためには、ネットワークづくりが必要であることを痛感しました。

Q. それから十数年。スポーツ栄養はずいぶん進歩したのでしょうか?

 はい。何といっても平成13年に開業した国立スポーツ科学センター(JISS)の中に栄養部門が位置づけられ、他部門と連携しながら栄養サポートを行えるようになったことは大きな進歩といえるでしょう。JISSにはわが国初のアスリート専用レストランもあり、選手の栄養教育をはじめ、食事診断や合宿に帯同してのサポートなど、多岐にわたるサポート活動・研究活動が実施されています。各競技団体からの栄養サポートに対するニーズはとても高いのです。今後は各競技団体やチームにスポーツ栄養士が配置されることが目標です。

Q. ところで、“スポーツ栄養士”の資格を得るためにはどのような勉強が必要なのでしょうか?

 管理栄養士であり、(財)日本体育協会が主催するスポーツ指導者養成共通講習会と日本スポーツ栄養研究会が(社)日本栄養士会の委託を受けて開催する専門講習会を受け試験に合格した人が、日本体育協会と日本栄養士会により共同認定されます。スポーツ医学や運動生理学などの幅広い知識を習得しなければならないので、かなり勉強が必要となるでしょう。平成20年度より養成がスタートします。

Q. これから“スポーツ栄養士”を目ざす人たちへのアドバイスをお願いします。

 単にサポートした、というだけでなく、どのように行ったらどのような成果が得られたかについて、コンディションやパフォーマンスの面からも評価する必要があり、それを指導に活かしていってほしいと思います。そのために、データの蓄積と事例研究の積み重ねが必須となります。また、トップアスリートのサポートだけでなく、ジュニアの育成も大きなテーマです。競技レベルはどうあれ、自らがサポートした選手が勝利した時の喜びは格別であり、スポーツ栄養の醍醐味といえるでしょう。まずは、スポーツ現場へ出向き、選手の息遣いを感じてください。そして、向上心を持って学び続けてほしいと思います。


田口素子さん
(日本女子体育大学准教授)

選手に対する栄養セミナーの様子